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「犬も歩けば棒に当たる」は災難?幸運?犬のことばの由来をたどる

「犬も歩けば棒に当たる」は、災難と幸運の正反対の2つの意味で読まれてきたことわざです。いろはかるたの話から、「犬猿の仲」、散歩道の草の名前、犬の名前「ポチ」まで、犬のことばの由来を資料でたどります。

公開日 約 6 分で読めます著者 イヌコミ編集部
「犬も歩けば棒に当たる」は災難?幸運?犬のことばの由来をたどる|庭の草むらでエノコログサのにおいを嗅ぐビーグル

この記事でわかること

  • 「犬も歩けば棒に当たる」は江戸のいろはかるたの最初の札で、上方の系統では別の句が採られているものが多くありました
  • このことわざは、「災難に出会う」と「幸運に出会う」の正反対の2つの意味で読まれてきました
  • 草の名前の「イヌ」は、有用な植物に似て非なるものや、形が犬の体の部分に似たものに付けられています
目次

散歩の途中で知り合いの犬に会い、「犬も歩けば棒に当たる、だね」と笑い合ったことはありませんか。

そんな場面で口にすることわざですが、意味を聞かれると、すぐには答えにくいものです。

実はこのことわざは、「災難に出会う」と「幸運に出会う」という正反対の2つの意味で読まれてきました。

本記事では、国立国会図書館や大学、自治体の資料をもとに、犬にまつわることばの由来をたどります。

ことわざのほか、秋の散歩道で見かける草の名前や、犬の名前「ポチ」の説も取り上げます。

資料の内容は、イヌコミ編集部が2026年10月20日時点で確かめたものです。

「犬も歩けば棒に当たる」は、江戸のいろはかるたの最初の札

「犬も歩けば棒に当たる」は、江戸のいろはかるたの最初の札として親しまれてきたことわざです。

大正時代以降は、いろはかるたそのものを「犬棒かるた」とも呼ぶようになりました。

国立国会図書館関西館の展示資料によると、札に採られたことわざは、上方(京都や大阪のあたり)と江戸とで違いました。

「犬も歩けば」が採られたのは江戸のいろはかるたで、この江戸のかるたがのちに主流になりました。

上方の系統では、別の句が採られているものが多いそうです。

いろはかるたの系統と、採られている句の例(国立国会図書館関西館の展示資料をもとに編集部が整理)
系統採られている句の例
江戸のいろはかるた犬も歩けば棒に当たる(のちに主流になった)
上方の系統「一寸先は闇」などの句が採られているものが多い

災難か幸運か、正反対の2つの読み方

自由学園の渡辺憲司氏(2018年の掲載時は最高学部長)は、このことわざには江戸時代から2つの解釈があると書いています。

1つは、積極的に動きすぎると、犬が棒で打たれるように災難に出会うという読み方です。

もう1つは、目的もなく出歩いていれば、何か幸運に出会うという読み方です。

同志社女子大学の吉海直人教授(2013年の掲載時)は、コラムで本来の意味にふれています。

もとは「用もないのにうろうろしているとひどい目にあう、だからじっとしていろ」という意味だった、と書いています。

同じコラムで紹介されているのが、明治初期の双六「新板いろはたとへ双六」です。

この双六では「棒」が「坊」に置きかえられ、子どもから菓子をもらう犬が描かれています。

絵の中には、犬のせりふ「あるけばかほう(果報)にありつく」まで書かれているのです。

吉海教授は、ここに「出歩いていると思わぬ幸運にありつく」という新しい解釈が読み取れるとしています。

どちらの意味で使えばいい?

正反対の意味が同じことわざから生まれているのが面白いところだと、渡辺氏は書いています。

使うときは、どちらの意味で言っているかがわかるよう、ひとこと添えると行き違いを防げます(編集部の提案)。

「犬猿の仲」は、なぜ犬と猿なのか

「犬猿の仲」は、昔話で犬が人の味方、猿が敵役になることが多いところから広まった、という見方があります。

成城大学民俗学研究所の特別展の案内は、「しっぺい太郎」の昔話も挙げています。

これは、霊犬(不思議な力を持つ犬)の力で猿の化け物が退治される昔話です。

案内は、そうしたところから「犬猿の仲」のことわざが浸透していったのだろう、と推しはかっています。

いっぽうで、民間信仰の世界では、犬と猿はとてもよく似た性格を持つとしています。

案内によると、猿は神様のお使いとして信仰され、「去る」に通じる言葉遊びとも相まって、魔除けの力を持つとされます。

犬も、悪いものを退ける動物として信仰されてきたそうです。

犬のお産は軽いとされることから、戌の日に帯祝い(妊娠中に腹帯を巻くお祝い)を行う習わしもできました。

仲の悪さのたとえに使われる犬と猿ですが、信仰の世界では、どちらも悪いものを遠ざける動物とされてきたのです。

草の名前の「イヌ」は「役に立たない」という意味?

草の名前の「イヌ」は、役に立たないという意味のものばかりではなく、形が犬の体の部分に似ているから付いた名前もあります。

西東京市のコラムによると、こうした名前は大きく2つのタイプに分けられるそうです。

名前に「イヌ」が付く植物の2つのタイプ(西東京市のコラムをもとに編集部が整理)
タイプ例
有用な植物に似ているが、役に立たないというニュアンスで付いた(麦や山椒に似ているが、食べるには向いていないものに多い)イヌムギ、イヌガラシ、イヌザンショウ
形が犬の体の部分に似ているエノコログサ(エノコロは犬ころのこと)

ただし、犬が役に立たないから付いた名前ではない、とコラムは書いています。

「否・異(似て異なる)」の音が「イヌ」に変わって定着した、という説が有力としています。

6〜10月にピンクの米粒のような花をつけるイヌタデも、名前に「イヌ」が付く草です。

国立科学博物館の資料は、葉を噛んでも辛くないので「役立たず」を表すイヌの名が付いたと説明しています。

森林総合研究所の多摩森林科学園によると、辛みがあって香辛料に使われたのは、水辺に生えるヤナギタデです。

ねこじゃらしの名で知られるエノコログサは、漢字で書くと「狗尾草」です。

環境省皇居外苑管理事務所の「季節の便り」は、「狗(えのこ)」は子犬のことだと紹介しています。

尾の発音がなまって「ろ」になり、エノコロと呼ばれたとされています。

散歩道の草で、ことばの話をひとつ

犬が草むらのにおいを嗅いでいる間に、草の名前の由来を思い出すと、散歩の時間が少し楽しくなります(編集部の提案)。

道ばたの草は、犬が口に入れないよう、そばで見守りましょう。

犬が草を口にして気になる様子があれば、かかりつけの動物病院に相談してください。

犬の名前「ポチ」は、外国語から来た?

犬の名前としておなじみの「ポチ」にも、語源の説がいくつかあります。

吉海直人氏(2022年の掲載時は特任教授)のコラムは、『日本国語大辞典』の補注(補足の注)を引いています。

そこに並ぶのは、英語のspotty(ぶち犬)、米語のpooch(犬)、フランス語のpetit(小さい)から来たという諸説です。

フランス人が犬に「プチ」と呼びかけるのを聞いた日本人が、犬の名前と勘違いしたという話も、伝聞として紹介されています。

同じコラムによると、昔話「花咲か爺さん」の犬は、古くは神の使いとして「白」という名前でした。

それが、明治34年にできた童謡では「ポチ」に変わっています。

語源には諸説がありますが、同じ昔話の犬でも、時代によって名前が変わってきたことがわかります。

次の散歩とおでかけで、ことばの話をしてみる

この記事で見たことばの由来には、1つに決まらないものがいくつもありました。

だからこそ、散歩やおでかけの道すがら、話のタネにしやすいのです。

散歩でにおいを嗅ぐ時間の意味は、犬の嗅覚のコラムで紹介しています。

秋のおでかけの段取りを考えるなら、秋の犬連れおでかけを日の入りから組むコラムも参考にどうぞ。

愛犬に合う歩き方は、診断「愛犬のおさんぽスタイル診断 実践」で確かめられます。

秋冬の散歩の知識は、クイズ「秋冬のおさんぽ検定 応用」で試せます。

歩いたあとは、ドッグカフェでひと休みしましょう。

注文を待つ間に、「犬も歩けば」をどちらの意味で使うか、いっしょに来た人と話してみてはいかがでしょう(編集部の提案)。

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よくある質問

「犬も歩けば棒に当たる」は、良い意味で使ってもよいですか

自由学園の渡辺憲司氏(2018年の掲載時は最高学部長)は、このことわざには江戸時代から2つの解釈があると書いています。災難に出会うという解釈と、幸運に出会うという解釈です。本来は、用もないのにうろうろするとひどい目にあうという意味だったとする研究者もいます。どちらの意味で言っているかがわかるように、ひとこと添えて使うと安心です。

「犬棒かるた」とは何ですか

いろはかるたの呼び名の1つです。「犬も歩けば棒に当たる」は、江戸のいろはかるたの最初の札として親しまれました。大正時代以降は、いろはかるたを「犬棒かるた」とも呼ぶようになりました。

名前に「イヌ」が付く植物は、すべて「役に立たない」という意味ですか

そうとは限りません。西東京市のコラムは、イヌムギのように有用な植物に似ているが役に立たないというニュアンスのものと、エノコログサのように形が犬の体の部分に似ているものがあると紹介しています。名前の「イヌ」は、犬が役に立たないという意味ではないとする説が有力です。

出典・参考文献

  1. 国立国会図書館関西館『第23回関西館小展示「犬も歩めば本になる―歴史から研究・物語まで―」展示資料リスト』(閲覧日 2026-10-20)
  2. 自由学園(渡辺憲司 最高学部長・2018年1月)『第87回 謹賀新年「犬も歩けば棒に当たる」』(閲覧日 2026-10-20)
  3. 同志社女子大学(吉海直人 教授・2013年3月)『絶滅寸前の「いろはかるた」』(閲覧日 2026-10-20)
  4. 成城大学民俗学研究所『民俗学研究所特別展 干支の郷土玩具シリーズ<2>犬・猿 -「犬猿の仲」とはいうものの!? -』(閲覧日 2026-10-20)
  5. 西東京市『第44回「イヌ」の名をもつ植物』(閲覧日 2026-10-20)
  6. 森林研究・整備機構 森林総合研究所 多摩森林科学園『イヌタデ』(閲覧日 2026-10-20)
  7. 国立科学博物館『イヌタデ(日本の野生植物 秋)』(閲覧日 2026-10-20)
  8. 環境省 皇居外苑管理事務所『季節の便り(2019年10月18日「花の香り」)』(閲覧日 2026-10-20)
  9. 同志社女子大学(吉海直人 特任教授・2022年1月)『「ポチ袋」の由来』(閲覧日 2026-10-20)

記事の内容は公開時点の情報にもとづきます。制度や数値は変わることがあるため、最新の情報は各出典でご確認ください。

健康情報に関するご注意

本コンテンツは一般的な情報提供を目的としたものであり、獣医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。愛犬の健康に不安があるときや異変を感じたときは、動物病院・獣医師にご相談ください。

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